第六回EDHカード紹介: 《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》

めでたく第六回まで続いたみんなで作るEDHカード紹介。今回のテーマは「プレインズウォーカー」。種類豊富なようでいて、実のところあまりEDHで使われることのないこのカードタイプ、打撲セレクションのカードはこちら──と、いつもなら続けるところだが、たまには違う切り口から話を始めてみよう。

EDHにおけるPWの弱さ

戦場に存在し続けるだけで、およそ尋常ではないアドバンテージを獲得していくPWというカードタイプ。スタンダードからヴィンテージまであまねくフォーマットにおいて力を振り撒くその姿は、まさにストーリー上のPWの強大さを余すことなく表現する素晴らしいデザインだ。だが冒頭で述べた通り、EDHというフォーマットにおいてのみ、ごくごく一部のカードを除いてその活躍ぶりは鳴りを潜め、そしてその現実は採用率という形で残酷に反映されている。
その理由はいくつか推測することができるが、第一に、通常の対戦と比して格段にPWが対処されてしまいやすく、第二に、各ターン1度ずつしか能力を起動できない制約が通常の対戦の半分しか自分のターンを迎える機会のない4人戦と絶望的に噛み合っていないことが挙げられる。
対戦相手のライフが各員40もある多人数戦では通常のコンバットでライフレースを挑むことはさほど意味をなさないが、数発叩けば沈んでしまうPWがいるなら話は別だ。普段はその身を持て余しているシステムクリーチャー達の格好の標的として叩きのめされてしまうだろうし、能力を活かす機会は半減、対処しなければならない脅威は3倍。2人対戦と比べて、都合6分の1程度しかPWの強さは発揮できない──というのはいささか強引に過ぎる計算式であるにせよ、そのカードパワーを大いに減じる事は議論を待たないだろう。

さらに加えて、ほとんどのPWは通常の60枚構築、1対1の対戦を前提とした調整がなされており、タイマンであれば鬼のように強い能力ですら多人数戦ではコストに見合った見返りをなかなか満足に受けられない。強烈なロック性能を持つ《神》のプラス能力であろうとも、対象にできなかった脇の2人に対してはまるで無防備だ。
以上の点から、特に「プラス能力で忠誠度をチャージしてからマイナス能力を運用する」「奥義を目指す過程でアドバンテージも稼ぐ」ようなタイプの能力構成をしているPWが十全に真価を発揮する機会はまず訪れないし、そうでなくてもWWK発売当時の《神》の低評価の如く「4マナ払ってソーサリーの《渦巻く知識》or《送還》を撃って終わった」なんて結末に終わってしまうことが往々にして起こりうる。PWは、ことEDHにおいては、ルールに愛されなかった存在なのだ。

……と、ここで記事を閉じてしまうとただPWが弱いという主張をしただけで終わってしまう。これは採用に値するPWを紹介する記事だ。
ならばどのようなPWがEDHにおいて使用に堪え得るのかといえば、これは簡単だ。ここまで弱いところをあげつらってきたのだから、その逆張りをすればよい。すなわち、

  • 起動の機会が少ないのであれば、いっそ割り切って一度起動して使い捨てる運用ができ、
  • その一度きりの能力起動は多人数戦においても劇的なリターンを得られ
  • それを場に出た直後に初期忠誠度の範囲で執り行える

という条件が満たせるならばよいということになる。

以上を踏まえて、ようやく今回紹介するカードの登場だ。

Tezzeret the Seeker / 求道者テゼレット (3)(青)(青)
プレインズウォーカー ─ テゼレット
 
[+1]:アーティファクトを最大2つまで対象とし、それらをアンタップする。
[-X]:あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがX以下のアーティファクト・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
[-5]:ターン終了時まで、あなたがコントロールするアーティファクトは基本のパワーとタフネスが5/5のアーティファクト・クリーチャーになる。
4

概要

まず強く目を引くのは、アーティファクトをサーチし戦場に出す第二のモードだろう……というより、《テゼレット》の採用理由はほぼこの能力にある。EDHにはアーティファクトを鍵とした様々なコンボが存在することはご存知の通りで、このカードはそれらのコンボパーツに自由自在にアクセスでき、さらにコストの踏み倒しまで同時に行ってくれる。すなわち「《テゼレット》が無事に着地する」ということは、そのまま「コンボパーツが着地する」と換言することができる。たった一度の能力起動で、ゲームを決定づけるコンボの成立というリターン。これほど見事にPWに求める要件を満たすカードもそうそうないだろう。
そしてサーチという強力なアクションは、当然本来の用途で使っても一定の強さを発揮する。同一の機能を持つコンボパーツの水増しという構築は「コンボへ至るルートを増やす」メリットと「コンボを決める時以外は不要牌となる存在がデッキ内に増える」デメリットを常に併せ持っているが、サーチ行為の持つ柔軟性はそのデメリットだけを綺麗に解消してくれる。そして《テゼレット》が導く変幻自在のアーティファクトの能力──マナ加速、アドバンテージ源、相手への強烈な妨害、厄介な置物への対処──は、いざコンボを決めるという場面に負けず劣らず、盤面に対する素晴らしい干渉力を持っているのだ。


運用

《Basalt》と《ブライトハース》のような複数のアーティファクトの組み合わせからなるコンボの場合、「相方」さえ引けば残った方になれるというサーチならではの強みがもちろんあるが、やはり特筆すべきは、真に「カード1枚で」ゲームが終わりうるアーティファクトを用いている場合だ。いかにも都合の良い話に聞こえるが、そんなカードが果たして存在するのか?
……存在するのだ。驚くべきことに。

Proteus Staff / 変幻の杖 (3)
アーティファクト
 
(2)(青),(T):クリーチャー1体を対象とし、それをオーナーのライブラリーの一番下に置く。そのクリーチャーのコントローラーは、自分のライブラリーを、クリーチャー・カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。そのプレイヤーは、そのカードを戦場に出し、残りを望む順番で自分のライブラリーの一番下に置く。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。

──散々引っ張ってまた変身かよ!!とお叱りの言葉を受けてしまいそうだが、《変身》《暴君》のコンボは実質1枚コンボのくせにやたらと多様なルートを取れるからこそ強いという側面もあるので、様々なカードを紹介する上でどうしても言及を避けられえないという事情をご寛恕いただきたい。
《潮吹きの暴君》はすっかりお馴染みとなったが、それを導くこのカード、マナコストは3マナである。これはテゼレットの忠誠度を残した状態で戦場へ出せることを意味する。……さて、《暴君》が如何様にコンボとなるか、今一度思い出してみよう。複数のアーティファクトへのバウンスループを構築することで無色有色の無限マナを生み出し、そのマナを元手に決め技となるカードへ展開していくのが基本構造だ。無限マナ、自分のパーマネントへのバウンス。そう、《暴君》の構築するループに《テゼレット》を組み込むことによって、本来ターン1回で完結するはずだったサーチ能力が好きなだけ使えるようになるのだ。そして《写本裁断機》だろうが《迫撃鞘》だろうが《ゴブリンの大砲》だろうがライブラリーから引きずり出せる《テゼレット》は、そのまま速やかにゲームを決めてくれることだろう。
コンボの過程に、終端に、そしてコンボに走らない場面ですら仕事に事欠かないこのカードは、まさしくEDHにおいても一級品のカードだ。自信を持ってお勧めしよう。

応用

《テゼレット》は、PWがEDHにおいて弱くなる要素に引っ掛からずに運用できるからこそ採用に足るということを長々と述べた。だがPWが活躍する手段はなにもルールの抜け道を探すだけにはとどまらない。PWが弱くならざるをえない原因たる基幹ルール──プレイヤーは4人、自分のターンは1度、そして相手のターンが3度──それ自体に干渉し、捻じ曲げることができることが青の強みだ。ここまで言えばお察しだろう。用いるのはこれらカード群だ。

そしてこれらのカードをプレイするにあたって、今まで言及すらしなかったテゼレットのプラス能力は大いに役に立つことだろう。あるいはマイナス能力の2分割払いによるコンボパーツの複数サーチや、《Mana Crypt》サーチによる擬似コスト軽減から次ターンの万全の状態でのコンボスタートなど、単純に使うだけでも強いテイクターンカードは「ターン1度」の各種制限を存分に悪用することで大いに輝いてくれる。

PWに限ったことではないが、通常の構築フォーマットで強さが証明されているカードをそのまま採用しても、特異な環境たるEDHで活躍できるとは限らない。そして、やはりPWに限ったことではないが、フォーマットの特性に、自分のデッキに、よりマッチするカードを常に探す。あるいは特に深い考え無く使っても強いカードを、より輝かせるような場面を模索する。そのような姿勢を常に持ち続けて欲しい。