津留崎優『箱入りドロップス』1〜5巻

箱入りドロップス (1) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (1) (まんがタイムKRコミックス)

「まあきらら系統によくある、ちょっとエッジがきつめに効いたキャラが可愛らしいのを見て和む系の漫画でしょー」とか思ってなんとなくスルーしてたらとんでもねえ伏兵で俺は何故今まで買わなかったのかと過去の自分に憤ってみたりした。いや大雑把に物語の構造を表現するとこれで一切間違ってないんだけど、キャラ立てと心理描写が絶妙すぎて感心するやら唸るやら先が気になるやらでもう。
序盤は掴みフェイズというか、雫が世間知らずかつ天然、俗世に染まらず愛されて育った故にひたすら善人という属性が先行してしばらく描写されるんだけど、言ってしまえばこの段階の雫はヒロインではなくマスコットであり、悪い言い方をしてしまうと人間味がないとも言える。周囲からの可愛がられ方もある種犬猫に対するそれに近いものがあったりで、これがずっと続くなら切ってた……んだけど、実際にはそうではなかった。

箱入りではあるものの確かに家族の愛を一身に受けて育った雫は、奇跡的なほどに善良で、不健康なまでに健全だった。それはキャラクター立てには寄与したもののキャラクターの魅力としてはむしろマイナスポイントで、ただ善良であるだけの存在が現実に存在しえない以上「フィクションという一線の向こう側」の存在でしかなかった。しかし年単位の作中時間を使って、じっくりとじっくりと育ててきた雫自身の自我、欲求が表に出てきた時、それまでの彼女の規範と真っ向から対立して思い悩む雫がものすごく魅力的なキャラクターへと反転した。正直このたった1ページのためだけにそれまでの話すべてがあったと言っても過言ではなく、この2コマに頭をぶん殴られたぐらいの衝撃を受けたので今こうして気持ち悪い文章を書き散らかしているレベル。

この漫画は「聖女かつ天使であった西森雫という女の子が、ただの一人の少女になるお話」だといえよう。作中時間がしっかり経過する話作りである以上、高校3年間というリミットはもうすぐそこへ来ているけれど、この話がどこへ着陸するのか、今更ながら見届けたいと思う。
箱入りドロップス (2) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (2) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (3) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (3) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (4) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス (4) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス(5) (まんがタイムKRコミックス)

箱入りドロップス(5) (まんがタイムKRコミックス)